研究概要 |
我々はこれまでに実験と理論の組み合わせによって,有機反応を検討し有機化学反応の素過程を明らかにしてきた。とくに,最近のケテンと共役不飽和化合物の反応についての大きな誤びょうの発見は,今まで認識されている有機反応機構について,従来プロダクトアナリシスから結論付けていた方法論に重大な誤りがあることを示した。ごく最近見い出したこの発見によってジフェニルケテンと共役不飽和化合物との反応について,新しい概念として「ケテンは共役系を区別して反応する」ことが得られた。この概念が,一般的なことであることを明らかにするため,共役不飽和化合物(環状および鎖状)とジフェニルケテンとの反応を低温から高温にいたるさまざまな温度でのNMRおよびIRのの測定による詳細な反応過程のモニターにより検討した。鎖状化合物の場合には,従来の反応例で得られるところのシクロブタノン体([2+2]付加生成物)は中間体であり,最終生成物は[4+2]付加生成物であることも見い出した。これらの得られた結果をもとに,最新の分子軌道理論によって反応機構についての詳細な検討を行ない真の反応機構を解析し明らかにするため,反応性についてフロンティア軌道論で吟味検討討し,各素過程の遷移状態構造決定を行った。さらに非経験的分子軌道法により精度高い活性化エネルギーの評価を行った。以上の検討によって,「ケテンは不飽和系を区別して反応する」という,真のケテン類と共役不飽和化合物との反応についての考え方を提案することができた。これらの研究成果については,投稿中であります。今後本研究課題「ケテン化学の革新」のもと,ケテンの化学全般の反応を見直し,反応機構の真の姿を明らかにすること考えて,研究を続けているところです。
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