本年度の「超分子フォトクロミック系の構築」に関する成果は、以下の通りである。 1. クラウン環を持つインドリルフルギドの錯形成とフォトクロミズム 18-ベンゾクラウン-6に相当するクラウン環を持つインドリルフルギドを合成した。この化合物は、カリウム、ナトリウム、ベンジルアンモニウムカチオンと錯体を形成し、その結果着色閉環体の吸収極大長が短波長化し、モル吸光係数が増大した。この結果は、1999年3月の日本化学会春季年会(横浜)、1999年5月の第4回機能性色素国際会議(大阪)で発表予定である。 2. 相補的多重水素結合対によって錯形成するインドリルフルギミドのフォトクロミズム インドリルフルギミドとビス(アシルアミノ)ピリジンは三重の水素結合対を形成して1:1で会合する。その会合定数は、無色開環体の時の方が着色閉環体の時より大きい。これを用いて、系内の非会合ゲストの濃度を光照射によって制御できることを明らかにした。この結果は、1998光化学討論会(八王子)で発表し、論文を速報として投稿中である。 3. ビナフトールを組み込んだフォトクロミック化合物によるコレステリック液晶のピッチの可逆的制御 ベンゾフリルフルギドに(R)-ビナフトールを組み込んだ化合物を合成した。この化合物は、以前合合したインドール誘導体と同様ジアステレオ選択的なフォトクロミック反応を示すことがわかった。この化合物をネマティック液晶にドープするとコレステリック液晶相が誘起された。光照射によるフォトクロミズムに伴い、コレステリックピッチが可逆的に変化した。この結果は、1999年3月の日本化学会春季年会(横浜)で発表する予定である。
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