申請者は既にchiral poolの中から酒石酸、アラビノース、あるいはグルタミン酸を用いることにより、様々な立体配置を有するラクタム誘導体が極めて立体選択的に得られ、これらから様々な生活活性アルカロイド類の全合成が可能であることを明らかにしている。一方キシロースを用いることにより、容易にこれらのうちの1つのエナンチオマーを得ることができる。このようにして得たラクタムのカルボニル基に、立体を精密にコントロールしてもう一つの官能基を導入することが可能となれば、本研究の目的である望む連続不斉中心を有したアルカロイドの骨格合成が一挙に可能となると予想される。そこで次の二つの方法を検討することとした。 1。ラクタムのアルキル化と、続く不安定中間体ヒドロキシピロリジンのLewis酸存在下による連続的な脱酸素反応を行い、一挙に光学的純度の高い多置換ピロリジン環を構築する。 2。1のアルキル化で得られる中間体は、互変異性体であるケトン体との平衡混合物であると考えられる。そこで水酸基の保護基の大きさを考慮した立体選択性の高い還元方法の開発を行い、連続不斉中心を有した鎖状のアミノアルコールを得る。 1。の手法では期待した付加および脱酸素反応生成物が収率良く得られなかったが、2の立体選択的還元反応に基づく方法では、遷移金属塩である塩化サマリウム、あるいは塩化セリウムを添加することにより、6員環キレートを経由した極めて立体選択性の高い還元反応が達成された。そこでこの反応を用いることにより、これまでに合成報告例の無い全く新しいピロリジンアルカロイド、Broussonetine Cの全合成を達成した。
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