インジウム原子にキレーションが可能な水酸基を分子中に持つ種々のシクロプロペンのアリルインデーション反応について系統的な研究を行うとともに、関連化合物のアリルインデーション反応についても併せて研究し、水酸基のキレーションによる反応の加速効果や選択性に及ぼす影響について総合的に検討した。 3位に水酸基を持つシクロプロペンのアリルインデーションでは、水酸基がアリルインジウム反応剤と強固なキレーションを形成し、立体選択的に付加生成物が得られた。また、シクロプロペンの1位にヒドロキシアルキル基を有するシクロプロペンでは、アルキル鎖長が反応の位置および立体選択性により大きな影響を及ぼすことが明らかになり、反応の一次生成物であるシクロプロピルインジウムが初めて安定に単離され、構造決定された。また、これら水酸基を持つシクロプロペンのアリルインデーションでは、キレーションによる反応の加速効果がきわめて大きいことも明らかとなった。更に、本シクロプロペンのアリルインデーション反応はアリルインジウム反応剤の種類に依存してその位置および立体選択性が大きく変化することも明らかにされ、反応に及ぼす多様な因子が浮き彫りにされた。 また、シクロプロペン同様、歪んだ環内二重結合を持つノルボルネノール誘導体のアリルインデーション反応についても研究を行い、水酸基のキレーションによる高い位置および立体選択性の発現と反応の加速効果が顕著に観測された。
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