研究概要 |
1.分極連続体モデルを用いた密度汎関数法による,1,2-ジメトキシエタンの水溶液中での構造解析 1,2-ジメトキシエタン(DME)のコンホメーションは,溶媒環境の違いにより大きく変化することが知られている。そこで本研究では,分極連続体モデルを用いた密度汎関数法による計算を行ない,これまで得られてきた実測結果と比較・検討した。その結果,TGG形は,孤立状態では見つかっていないコンホマーであるが,今回の計算の結果,双極子モーメントが他のコンホマーにくらべて大きいことから水環境下では大きく安定化した。一方,孤立状態では1,5-CH...O相互作用により安定化しているTGG'形は,水との接触面積が小さいため水環境化での安定化はそれほど大きくない。これらの結果は,DMEの水溶液中のラマンスペクトルの結果とよく一致している。 2.密度汎関数法を用いた基準振動解析における計算精度の系統的研究 平成10年度の研究において,振動解析を行ううえでは,特にBecke 3 Typeの密度汎関数法が非常によい結果を与えることを示した。平成11年度では、さらに多数の基本的な化合物の実測振動数を用いることにより,その基準振動解析における計算精度について系統的研究を行った。基準振動計算は,島内によるデータ集に掲載されている約200種類の基本的な化合物を対象としてB3LYP/6-311+G^<**>レベルで行った。いくつかの化合物では,低波数領域において計算値が実測値に対して大きくずれる場合もあるが,一般的には実測値に対し5%程度の精度で一致した。スケール因子は波数値が大きいモードほど小さな値となり,実測波数値との間になんらかの直線関係がある様子がみられた。
|