研究概要 |
1. 代表的な有機電子供与体の一つであるテトラセレナフルバレン(TSF)を,鎖長の異なるアルキレンあるいはアルキレンジチオスペーサーとて連結した各種2量化TSFの短段階合成に成功した。中性状態の分子構造と結晶構造を明らかにし,キャリア移動に適した配列をしていることが分かった。また,これらを構成要素とする導電性の錯体を得ると共に,酸化状態におてスペーサーの長さに依存したU字型の配座を介して,分子内パイダイマーを形成する傾向があることが分かった。 2. ヘキサチオベンゼンをコア部分としレドックス部位として各種のオリゴチオフェンを組み込んだ自己集合性ディスク状分子の系統的合成を行い,液晶性の評価を行った。ヘキシル基置換テルチオフェン誘導体において,棒状分子ではないにも関わらずスメクチックC,スメクチツクA,およびネマチツク相を有することが分かり,MM3分子力場計算結果から分子はシリンダー状の配座をとって液晶相を形成していることが示唆された。 3. ジオクチル置換チオフェン6量体を基本単位とし,臭素化,エチニル化を経て末端アセチレンのカップリングおよびGPCによる分離で,各種のオリゴチオフェン前駆体を一気に得る手法を確立した。これに続くジアセチレン部分のチオフェン化によって34量体までの長鎖オリゴチオフェンの合成とキャラクタリゼーションに成功した。これらのナノサイズ棒状オリゴマーの機能の発掘とドープ状態における電導機構の解明を進めている。 4. さらに,オリゴチオフェン4量体,8量体および12量体の末端に環化還元活性部位として飽和結合を介して[C60]フラーレンを組み込んだナノサイズ棒状分子の合成を行い,電気化学的および光化学的性質を研究した。その結果,この系がピコ秒オダーの極めて高速の光誘起エネルギー移動を示すことを見出し,エネルギー移動の速度はオリゴチオフェンの鎖長に依存して変化するという,分子素子に応用するために極めて有益な知見を得た。
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