研究概要 |
1.前年度に引き続き,チオフェン6量体を出発原料として48量体までの一連の長鎖チオフェンオリゴマーの合成に成功した。GPC分子量分析から,これらがワイヤ型の剛直な構造をとっていることが支持され,分子モデルの上では48量体の鎖長は18.6nmに達すると見積もられる。ドープ下の電導度,酸化状態のスペクトルおよび電子スピン共鳴スペクトル測定から,6量体ではポーラロンが主体的キャリヤであり,13量体以上ではツインポーラロンがキャリヤの主役であると推定された。 2.オリゴチオフェン4量体と8量体のC60連結化合物に金電極との接合のためのジスルフィド基を導入した化合物を合成し、修飾金電極を作成した。4量体化合物は,金電極状に密な膜を形成しなかったが,8量体化合物からは緊密な自己集合単分子膜が得られた。この修飾金電極を用いて光起電力を測定したところ,電子キャリアとしてのメチルビオロゲンの存在下,顕著な光陰極電流が観測され,オリゴチオフェンが単分子光電池系のドナー部位としてだけでなく電荷キャリア移動の分子ワイヤとして高い機能を有していることを明らかにした。 3.末端に蛍光特性の高いピレン部位を有する一連のオリゴチオフェン誘導体を合成し,基本的な物性と電界発光(EL)素子の発光材料としての応用に関する研究を行った。オリゴチオフェンの末端にピレンを導入することで,薄膜性能の向上,発光の著しい長波長化,オリゴチオフェンの鎖長に依存した正孔輸送性から電子輸送性までの特性変化なとが明らかとなり,これらを発光材料として用いたEL素子において黄色から橙色の発光が達成された。 4.急速真空熱分解(FVP)法を用いることで,ベンゾトリチオフェン誘導体からトリフェニレノトリチオフェンを合成することに成功した。X線構造解析の結果,六方晶系をとり,ボウル型に約18度歪んだ分子構造を有する初めてのボウル型含硫黄複素多環芳香族化合物であることが分かった。全ての分子はS・・・S接触を介して一方向にconcave-convex様式で積層していおり,自発分極を有する焦電効果や圧電効果の期待できる興味深い構造であることが明らかとなった。
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