本研究は水酸基やカルボキシル基の保護を必要としない炭素-炭素結合生成反応の開発について行なった。平成10年〜平成11年度に得られた結果は以下の通りである。 1)三塩化ビスマスー亜鉛存在下、ほぼ1当量の臭化アリルをカルボキシル基を有するケトンやアルデヒドと反応させたところ、収率良く対応する化合物が得られた。本反応はカルボキシル基を保護する必要が全くない。 2)金属ビスマス存在下、アリリックアルコールをin situでアリリックハライドに変換し、引き続きアルデヒドを反応させたところ、収率良く対応する化合物が得られた。 3)金属マグネシウムー三塩化ビスマス存在下、含水溶媒中で種々のアルデヒドと臭化アリルを反応させたところ、収率良く対応するホモアリリックアルコールが得られた。この反応は水と三塩化ビスマスが必要である。 4)アリルマグネシウムクロリドと三塩化ビスマス、四塩化スズ等の種々の金属塩から得られるアリル化試剤を含水溶媒中でアルデヒドと反応させると、容易にアリル化反応が進行することを見い出した。 5)アリルスズは全くの水中でアルデヒドと反応することを明らかにした。 6)光学活性アルコールとして、酒石酸エステルを用いて、テトラアリルスズをベンズアルデヒドと反応させたところ、不斉アリル化反応が進行することを見い出した。 7)金属ビスマス存在下、ほぼ1当量の臭化アリルを無保護の糖と反応させたところ、収率良く対応する化合物が得られた。 以上の反応はカルボキシル基や、水酸基を保護する必要がなく、また含水溶媒中や水中で進行することを考えると、環境調和適応型有機合成反応と考えられる。
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