研究概要 |
われわれの研究室ですでに開発したChiral Oxazaborolidinone-Promoted Asymmetric Aldol Reactionを有効に適用してAcydic Stereoselection under Promoter Controlのもとで,不斉反応を繰り返して必要な立体関係を構築する手法がいくつかの天然物の鎖式構造合成に効果的であることがわかってきた.エポチロンのCl-C9セグメントの不斉合成もその線にそって進行している.C4のジメチル基導入の不斉アルドール反応は>98%eeの不斉収率で進行した.しかしながら,つづく3級炭素をα位にもつアルデヒドの場合に非常な困難に直面した.詳細なモデル実験を繰り返して,その特殊な系での反応立体化学が明らかにされた(TetrahedronLett.1998,39.8287).このセグメントがわれわれの不斉アルドール反応にとってさらに困難である点は,プロピオネート単位を不斉導入しなければならない点である.キラルルイス酸を用いた不斉アルドール反応でそのシンおよびアンチ体のエナンチオ選択的作り分けはだれも成功していない非常に挑戦的な課題である. わたしはこの課題にたいして平成10年度の研究でひとつの解決を達成した.これらの研究結果は未発表である.すなはち,α位に除去し得る量換基を持つプロピオネートシリル求核剤を開発して,われわれの不斉アルドール反応に用い高エナンチオ選択的にα置換アルドールを合成した(>97%ee).つづいて,スズヒドリドによってラジカル還元することで,その条件をコントロールしてシンおよびアンチの作り分けに成功した.現在この新しい手法でセグメントの続く不斉点の導入を検討している.
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