1.有機合成反応への応用 超強酸性フッ素化スルホン酸樹脂Nafion-H-ルイス酸混合系での種々の有機反応をNafion-H単独の場合と選択性、反応温度、反応時間及び収率等の比較を行い、その酸性度増大発現機構が解明出来た。特に、工業的に中間原料製造に重要であるアルキル化、トランスアルキル化、アシル化、ニトロ化、ハロゲン化、骨格異性化、エステル化及び転位反応における触媒活性および高分子効果に基づく選択性を明らかにした。特に、Nafion-H触媒下での分子内Friedel-Craftsアルキル化及びアシル化反応を用いる大環状化合物の実用的な一般性の高い合成法を開発することが出来たのは特筆すべき成果である。さらに、ベンゼン及びモノ置換ベンゼン類のFriedel-Craftsベンジル化、アシル化反応及びニトロ化等の求電子置換反応を行い、各反応の位置選択性及び基質選択性を他のプロトン酸或はルイス酸触媒下での値と比較することにより、高分子効果が引き起こす活性や選択性を評価した。 2.固定化Nafion-Hの触媒の開発 Nafion-H触媒はその固体表面のみで触媒能を発揮するので、接触面積の増大が重要となる。そこで、安価なシリカゲル、アルミナ等にNafion-H触媒を固定化した触媒系の開発を行ない、触媒の効率化に成功した。さらに、Nafion樹脂にセリウム(IV)やクロム(III)を担持させ、安価で取扱い易いNaBrO_3等の共酸化剤存在下でのアルコール、縮合多環芳香族化合物等の有機化合物の酸化反応を行ない、製造プロセスの簡略化、クロム酸等の廃酸による環境問題等を克服できる次世代の酸触媒系の開発に成功し、着実に目的とする研究成果が得られており、新しい触媒系の開発に重要な示唆を与えることが出来た。
|