研究概要 |
アリル化反応は有機合成化学的に重要な反応の一つであり、さらにその不斉反応化は有機合成化学に課せられた大きな課題の一つである。近年、アリルスズ化合物を求核試剤として用いた不斉合成反応がいくつか報告されている。しかしながらスズ化合物はその毒性およびその環境に与える影響が大きな問題になっている。有機ゲルマニウム化合物の有機合成化学への応用の一環として、本研究ではより毒性の低いゲルマニウム化合物に着目し、アリルゲルマンを求核試剤として用いた不斉アリル化反応の開発を目指している。 アリルゲルマンとアルデヒドの反応をモデル反応として、Ti,Pd,Cuなどの遷移金属を中心金属として用いて調製した種々の不斉触媒を検討した。 その結果、ジクロロメタン中室温でチタンテトライソブロポキシドおよび(R)-(+)-ビナフトールより調製した不斉触媒およびMS4A存在下アリルトリエチルゲルマンにアルデヒドを作用させると、最高89%eeの不斉収率で対応するホモアリルアルコールが得られることを見いだした。芳香族アルデヒドよりも脂肪族アルデヒドの方が高い不斉収率を与えた。ジクロロジイソブロピルチタンおよび(R)-(+)-ビナフトールより調製した不斉触媒を用いると不斉収率は大きく低下した。 まだ、不斉収率、化学収率ともに満足の行くものではないので、今後さらにより良い触媒の開発を目指して検討を行う予定である。
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