有機合成化学の分野においてこれまでほとんど注目されていなかった有機ゲルマニウム化合物に着目し、新規なアリル化試剤としてアリルゲルマンを用いたアリル化反応について研究を行った。 スカンジウム(III)トリフラート触媒存在下、含水アセトニトリル中、テトラアリルゲルマンをアルデヒドに作用させると、アルデヒドのアリル化反応が速やかに進行し、対応するホモアリルアルコールが高収率で進行した。本反応は、ケトン存在下アルデヒドに対して官能基選択的に進行した。更に、アルデヒドスカンジウム(III)トリフラートを触媒存在下、アリルトリエチルゲルマンにアルジミンを作用させるとアルジミンに対するアリル化反応が速やかに進行し、対応するホモアリルアミン誘導体が収率よく得られた。また、本反応は、アルデヒド存在下イミンに対して高い官能基選択的に進行し、アルデヒド、アミン、アリルゲルマン三成分縮合反応が効率よく進行することを明らかにした。 次に、イミンの活性化反応が、より安価な試薬であるBF_3・OE_<t2>-CH_3CO_2H混合系を用いることにより可能であることを見いだした。すなわち、アルデヒド、アミン、アリルゲルマンの3成分縮合反応が効率よく進行し、対応するホモアリルアミンが高収率で得られた。 アリルゲルマンを用いたエナンチオ選択的なアリル化反応の開発を目ざした。チタンテトライソプロポキシドと(R)-(+)-BINOLより調整したキラルな触媒を用いることより、アルデヒドに対するアリルトリエチルゲルマンのアリル化反応がエナンチオ選択的に進行し最高89%eeで対応するホモアリルアルコールが得られた。
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