研究概要 |
1, チアブタジエン類の不斉へテロディールス・アルダー(HDA)反応 キラルルイス酸触媒によるアキラルな鎖状チアブタジエンとオキサゾリジノン誘導体を導入したジエノフィルとのエナンチオメリックな反応について検討を行った。その結果,キラルルイス酸触媒としてシクロヘキサンビスイミン-銅トリフラートあるいはビスオキサゾリン-銅トリフラートまたはニッケルパークロラートを用いることにより,最高>99%eeという高いエナンチオ選択性を実現した。しかもモレキュラーシーブスの存在が,高い不斉誘起に大きく作用していることも発見し,さらには反応の触媒化にも成功した。α,β-不飽和ジチオエステルとのジアステレオメリックなHDA反応では,ルイス酸(TiCl_4、SnCl_4)が有効に働き高い不斉収率を実現でき,しかも反応温度を調節するか溶媒や添加剤を選ぶことにより,同じ不斉源を用いてもジアステレオ面選択性を逆転させることができることも明らかとなった。キラルなα-メチレンチオカンファーと一般的なアキラルジエノフィルとのジアステレオメリックなHDA反応では,完全な面選択性を実現した。 2, 交差共役へテロトリエン類のジエン伝達へテロディールス・アルダー反応 今までに例のない新しい交差共役系のジエン伝達へテロディールス・アルダー反応を開発し,酸素および窒素または硫黄を含む多環系複素環化合物が効率よく得られることを明らかにした。一段階目の環化反応では,交差共役ジオキサトリエンが,ビニルエーテル,スチレン,ジフェニルエチレンと高配向高立体選択的に反応し,引き続く二段階目の環化反応では酸素原子を窒素または硫黄に変換後,トシルイソシアナート,ジフェニルケテン等のジエノフィルとそれぞれ高い反応性で,相当する多環系複素環化合物を効果的に与えることを明らかにした。
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