原子内包フラーレンに対して、多量に生成することができるC60やC70のその生成過程で原子を内包することは困難とされてきたが、我々は加速器を利用した核的反跳法を用いて、放射性同位元素を直接外からC60やC70フラーレン分子に内包させることができることを放射性同位元素をトレースすることにより見いだした。内包された原子はベリリウムやクリプトン、キセノンなどであるが、これらの放射性同位元素においてEC崩壊核種であるBe-7に着目し、その化学形Be@C60の状態において半減期の精密測定を行った。当初の計画では温度による影響と圧力による影響を調べる計画であったが、本年は、まず、常温と6Kの状態において、半減期がどれほど異なるか調べた。Be-7はいろいろな化学形についてその半減期の報告がなされている核種で、53日を多少越える半減期が与えられている。ごく最近の測定結果を図1に示す。常温では53.24±0.06日と与えられているが、6Kの温度では52.98±0.05という結果が与えられた。この値は天然に存在するK-40の放射能の観測値が統計内で一定であることから信頼できる値と考えられる。フラーレンに内包された原子はケージの内側において高速で回転していると言われているが、最近の研究では80K以下になると内包された原子の運動が止まることが分かってきた。本測定の結果ではこの化学的なdinamicsとstaticな違いが現れているのかもしれない。今後、本研究で導入された冷却システムを用いてBe-7の半減期を再度チェックするとともに、いろいろな核種について測定が必要である。
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