研究概要 |
本研究の目的は、リン酸ジエステル結合の加水分解能を有するd-f元素系二核錯体を合成し、人工制限酵素構築のための基礎的情報を提供することである。 本年度は、2,6-diformyl-4-methylphenol:1,3-dimainopropaneを2:2、2,6-diformyl-4-methylphenol:ethylenediamine:diethylenetriamineを2:1:1および2,6-diformyl-4-methylphenol:ethylenediamine:1,3-diamino-2-propanolを2:1:1で縮合させることによって得られる環状二核化配位子を用いて、それらのCu(II)Ln(III)錯体、Cu(II)Cu(II)錯体、単核Ln(III)錯体、単核Ln(III)錯体(Ln=希土類)を合成し、基質としての4-nitrophenylphos phateに対する加水分解能を調べた。その結果、CuCu錯体と単核Cu錯体では、いずれの場合も反応が進行しなかった。これに対して、CuLn錯体と単核Ln錯体では反応が進み、CuLn錯体の方がより活性であることがわかった。これらのことは、CuLn錯体では、Cu(II)とLn(III)の両方が加水分解反応に関与していることを示している。すなわち、d遷移金属イオンとf遷移金属イオンとの協同効果によって加水分解が進行しているのである。なお、生成物として4-nitrophenolateのみが検出されたことから、加水分解的にのみ反応が進行し、酸化還元反応などは起こっていないことがわかった。また、これら3種類の配位子のCuLa錯体の反応性を比較した。その結果、側鎖に-NH-基や-OH-基を有する配位子の錯体では、それらの基が反応に大きく関わっていることがわかった。さらに、いくつかの錯体を用いて、Bis(4-nitrophenyl)phosphateの加水分解も調べた。
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