研究概要 |
可逆な1電子酸化還元を受けるフェロセンに対して、ルテノセンは+0.6V付近に不可逆な2電子酸化波を示す。ところが、2つのルテノセンを2重結合で架橋した1,2-ビス(ルテノセニル)エチレン誘導体は、2つのルテニウムサイト間で強い金属-金属相互作用が働く結果、大きく低電位シフトした不可逆な2電子酸化波を示し、それを反映して2電子化学酸化においては新規な構造異性化を起こした(μ-η^6:η^6-ペンタフルバジエン)ジルテニウム錯体を与えた。そこで、2つのルテノセンが直接結合したビルテノセンについて2電子酸化反応を行ったことろ、^<13>CNMRスペクトルおよび単結晶X線構造解析により、先例のない珍しい配位様式を持つ[η^6:η^6-フルバレン]錯体であることが判明した(Organometallics,1999)。 2重結合の代わりにベンゼンやチオフェン等の芳香族化合物を架橋配位子とする2核ルテノセン錯体の電気化学的挙動や酸化反応に興味が持たれる。そこで、これらの錯体を合成する出発物質として、新たに2-ルテノセニル-1,3,2-ジオキサボロランを合成した。その化合物をパラジウム触媒を用いてジハロベンゼン,ジハロナフタレン,ジハロチオフェン誘導体とのクロスカップリングすると、目的とする芳香族架橋2核ルテノセン誘導体を得ることができた。ベンゼン及びナフタレン架橋誘導体における2つのルテニウム金属間での相互作用は小さいが、チオフェン誘導体では金属間の相互作用が大きく2電子酸化体の安定なことが電気化学的測定から明らかになり、2電子酸化体の単離に成功した(第49回錯体化学討論会、日本化学会第78回春季年会)。
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