研究概要 |
フェロセンが可逆的な1電子酸化還元挙動を示すのに対して、単核のルテノセンは不可逆な2次電子酸化を受ける。これまでに我々は2核ルテノセン誘導体はEECタイプの2電子酸化還元を受けるものがあり、その2電子酸化反応では安定な2電子酸化体が単離できることを報告してきた。今回、その延長として、Ru(II)テトラメチルルテノセニルアセチリド錯体が同様の2電子酸化還元挙動を示すこと、2電子酸化すると安定なシクロペンタジエニリデンエチリデン錯体に構造異性化することを明らかにした。また、ルテノセニルエチレン誘導体における、架橋エチレン部位のメチル置換の効果も明らかにした。さらに、新たに芳香族化合物によって架橋された2核ルテノセン誘導体を合成する合成ルートを開発し、得られた芳香族化合物によって架橋された2核ルテノセン誘導体の酸化還元挙動を検討した。ベンゼン、ナフタレン誘導体では、2つのルテノセン部位間の相互作用は小さく、安定な2電子酸化体は得られなかったが(日本化学会第76春季年会、1999)、チオフェン誘導体で架橋された誘導体では、大きな相互作用が観察され、安定な2電子酸化体が単離できた(第49回錯体化学討論会、1999)。また、このようにして得られた2電子酸化体には、Ru^<II>-Ru^<II>〈-〉Ru^<III>-Ru^<III>〈-〉Ru^<II>-Ru^<IV>の限界構造の共鳴が存在し、その分子がどのような架橋配位子で結ばれているかによってそのいずれかの限界構造から反応が起こることが明らかになってきた。例えば、先にその合成報告した(μ-η^6:η^6-フルバレン)ジルテニウム錯体は、ニトリル類を反応させるとRu^<II>-Ru^<IV>の混合原子価錯体を与えた。また、臭素との反応ではRu^<II>-Ru^<IV>状態から反応したと考えられるRu^<IV>-Ru^<IV>錯体を与えた。また、チオフェン架橋の2核ルテノセン誘導体では、Ru^<II>-Ru^<II>錯体を安定に単離することはできなかったが、ニトリルとの反応では安定なRu^<II>-Ru^<IV>錯体を単離できた(日本化学会第78春季年会、2000)。また、チエノ[3,2-b]チオフェン架橋の2核ルテノセン誘導体では、Ru^<II>-Ru^<II>錯体を安定に単離してスペクトル的に構造決定でき、これをアセトニトリルに溶かすと、Ru^<IV>-Ru^<IV>錯体を与えた(第50回錯体化学討論会、2000)。 不飽和化合物で架橋した2核ルテノセン誘導体との関連で、ホモアンニュラーに架橋した2核ルテノセン誘導体の性質に興味を持ち、その合成を検討した(日本化学会第78春季年会、2000)。
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