研究概要 |
活性酸素種の一つスーパーオキシドアニオンを分解する酵素,SODをからだの中に多くもつ動物ほど長生きすると考えられている。金属がこの酵素の中心的な役割を果たしている。「原子核をプローブとするマルチトレーサ法および中性子放射化分析法」を用いて,脳内の金属SOD酵素の生物無機化学的研究を展開してきた。 初年度平成10年度は,脳内各部位(大脳皮質,線条体,海馬,橋延髄,小脳)における金属の取込率と金属濃度を決定した。平成11年度は年齢を1日齢〜53週齢に拡大し、Zn、Mnの金属のデータを収集した。 平成12年度は、1日齢〜6週齢までに特に注目し、マルチトレーサ法および中性子放射化分析さらにマクロオートラジオグラフ法を適用し、脳局所における代謝について知見を得た。 1.Mnの短期間の取込が、若年齢(1日〜21日齢)で極めて高い。一方、Mn濃度はこの期極めて低い。この成長期におけるMn要求度は、脳重量の急激な増加、さらにはSOD濃度の増加と関連しているようであった。 2.Znにおける傾向は、Mnほどではないが同様であった。これもやはり成長期におけるSOD濃度の増加と考えられる。 SODの生物無機化学の寄与としては成果があった。今後、脳内の酵素そのものの単離と機能発現について探求すべきであろう。
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