研究概要 |
CeO_2結晶に関しては,Ceイオンの化学結合に関心が高いことから,今までXANESを用いた数多くの研究が行われ,化学結合に関する議論が行われている。本研究では,CeO_2およびCeO_2・La_2O_3固溶体の理論XANESスペクトルを求め,酸素欠陥に隣接したCeの化学状態と局所構造を議論した。まず,CeO_2の実験スペクトルに対応した理論スペクトルがえられたので,波動関数を描画して性質を調べた。Ceから飛び出した光電子が,8個の酸素原子が作る"かご"の中に捕らえられていることがわかった。第2,3ピークはCe d成分を主とするもので,散乱原子である酸素原子との散乱経路の長さに応じて,e_gとt_<2g>に分裂している。また,第1ピークは,酸素原子間に強い準定在波があり,そこにわずかにCe成分が混入するために小さいピークとなって観測されている。単純なCeO_8クラスターで実験スペクトルが再現され,化学種と関係づけて解釈できており,第一近接原子の寄与が決定的であることがわかった。CeO_2・La_2O_3固溶体の場合は,CeO_2と比較して,第2ピークの強度が明らかに変わった。この変化は,化学結合の差異によるとこれまで解釈されていたが,今回の解析から,化学状態による効果を議論し,酸素欠陥による局所構造が反映したものであることをあきらかにした。 LiFなどのリチウム化合物のXANESスペクトルを求めたところ,クラスターの理論スペクトル計算より,ピークの特徴が明らかになった。つまり,低エネルギーのピークが励起子によるものでLi-F間の電荷移動をとらえており,高エネルギーのピークがLi-Fの局所構造によるものであることがわかった。
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