研究概要 |
シトクロームcペルオキシダーゼ(CCP)はシトクロームc(cyt c)の過酸化水素による酸化反応を触媒するへム酵素であり,その活性中心にはメトミオグロビン(metMb)と同じプロトヘムが存在しヘム鉄はヒスチジンイミダゾールと水分子を配位している。したがって,metMbもCCP活性を示すが,その反応速度が遅いためヘムの酸化によりその活性を容易に失う。本研究ではmetMbの表面に存在するリシン残基の一つにジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を修飾して酸性蛋白質に改変しcyt cと複合体を形成させることにより電子移動反応を促進させて,活性の改善を図ることを目的とした。1)化学修飾メトミオグロビン(metMb-(DTPA)_n)を調整しDTPAの結合位置を特定した。metMbDTPAではLys87に,metMb(DTPA)_2ではLys87とLys145に,metMb(DTPA)_4ではLys47,Lys87,Lys145,Lys147に,metMb(DT-PA)_5ではLys47,Lys50,Lys87,Lys145,Lys147にそれぞれ結合していることがわかった。2)化学修飾メトミオグロビン(metMb(DTPA)_n)のCCP活性の測定を行い,反応活性とDTPAの結合数との関係を検討した。また,metMb(DTPA)_nと過酸化水素との反応で生成するFerrylMb(DTPA)_nとcyt cとの反応でも複合体生成定数と複合体内電子移動反応速度定数の両者が、DTPAの結合数が増すにつれて大きくなることがわかった。cyt c(II)からFerrylMb(DTPA)_nヘの電子移動は次のような経路を通して行われているものと推定される:Fe(II)in cyt c(II)→Lys13 and/or Lys73 in cyt c(II)→DTPA-modified Lys87,145,147 in FerrylMb→Tyr146→His93→Fe(IV)in FerrylMb.この電子移動距離は約35Åにも及びその反応速度定数は6.5×10^<-2>s^<-1>(25℃)であった。3)亜鉛ミオグロビン(Zn-Mb(DTPA)_n)とcyt c(III)との複合体内光誘起電子移動反応を検討し,その反応機構を明らかにした。
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