研究概要 |
(1) 金属フラーレンを中性子放射化を起こす核反応中に原子核の高励起状態が生じる。この時放出されるエネルギーによるホットアトム現象で選択的に金属だけを励起してその金属フラーレンの変化を追跡することを目的として、LaからLuまでの8種類の金属を含む金属フラーレンを合成した。これに関しては、今年度はどの様なものがどのくらい生成するのか等を調べた。 (2) Sm,Gd,Ybについてはそれぞれ金属フラーレンを合成してその中から代表的な金属内包フラーレンであるM@C_<82>(M=Sm,Gd,Yb)を精製して、それを放射化することによって生成した放射性同位体がさらにβ壊変で測定可能な放射性同位体で原子番号が異なる系ができる。これをトレーサーとしてそのHPLC挙動を検討した。Sm-Eu,Gd-Tbの系では原子番号が変わっても金属内包フラーレンは安定に存在することが分かった。これに対してYb-Luの系では大半の金属フラーレンが安定ではなく何らかの化学反応を起こすことが確認された。さらに、マルチトレーサーを用いた金属フラーレンの研究で^<146>Gd-^<146>EuのEC壊変で原子番号が変化する系が見いだされ、この系についてもHPLC挙動を検討した。結果は大部分が安定で存在することが確認された。これらの結果と、今までに行ってきた希土類の金属フラーレンの研究とを組み合わせて考えると、内包される金属が3+(La,Ce,Pr,Nd,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Lu)と2+(Sm,Eu,Tm,Yb)の間で空気中に安定に取り出せている金属内包フラーレンの異性体の数が異なっていて、その内3+の異性体の一つが2+で3種類見いだされている内の1つだけと同じであること、そして、他のケージのものは金属の価数が変わると化学的に不安定になることが見いだせた。
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