研究概要 |
ポルフィリン-鉄(IV)錯体は基底状態で(dxy)^2(dxz)^1(dyz)^1の電子配置を有するS=1の常磁性錯体であることが知られている。このFe(IV)イオンが非平面構造を有するテトラアルキルポルフィリン(TRP)に挿入された錯体[Fe^<IV>(TRP)]^<2+>では、dxyと(dxz,dyz)のエネルギー準位が逆転し、(dxz,dyz)^4(dxy)^0の反磁性錯体(S=0)が生成する可能性がある。そこでメソ位に立体的に嵩高いtert-ブチル基を導入したテトラ(tert-ブチル)ポルフィリンを合成した。この化合物のポルフィリン環は大きくラッフル変形しているため不安定であり、金属挿入反応の過程で酸化分解してしまう。そこで現在は様々な温和な条件下での鉄の挿入反応を検討している。 ポルフィリン-マンガン(III)錯体は基底状態でS=2の高スピン錯体である。この錯体に強い配位子が結合すると(dxy)^2(dxz)^1(dyz)^1の電子配置を有するS=1の常磁性錯体が生成する。従って、ポルフィリン環がラッフル変形すれば(dxz,dyz)^4(dxy)^0の反磁性錯体が生成する可能性がある。現在メソ位にイソプロピル基を持つ鉄(III)ビス(シアニド)錯体の合成に成功し、その錯体の^1HNMRと^<13>CNMRから電子配置を検討している。
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