研究概要 |
平成10年度科学研究費補助金交付申請書に記載した「研究目的・研究実施計画」に従って研究を行い、以下の実績を得た。 1. ホストとしてイオン交換容量の大きい合成フッ化四ケイ素雲母を、ゲストにはテトラメチルベンジジンを用いて、ホスト・ゲスト比が1:1及び1:2の層間化合物を合成した。特に1:1の化合物について、イオン交換法による試料合成時に、懸濁液を長時間攪拌した後に濾取したものは可逆的な吸湿性を示し、熱重量分析等の測定を行った結果、この化合物が多孔性であることが明らかとなった。この試料は、水を吸着させた状態では、室温で3G程度の極めて先鋭化されたESR吸収線を示し、分子間で高速な電子の移動が起こっていることを示唆している。 2. 上記項目1.で示した試料について、ESRスペクトルは低温になるに従って吸収線幅が広がり、120Kでは8.5G程度となった。これは、電子の移動速度が遅くなっていることを表しており,吸着した水の状態と何らかの関係があるものと思われる。そこで、さらに単純な系としてアルカリ金属イオンをはじめとする種々の陽イオンを層間に持つ粘土鉱物について、層間の吸着水の挙動を固体NMR法により明らかにした。 3. 室温で直流電気伝導度測定を行った結果、上記の水吸着1:1試料では測定開始直後の10^<-6>から1時間後の10^<-7>Sm^<-1>程度まで伝導度の値が連続的に変化した。この時間変化を示す成分はテトラメチルベンジジニウムのプロトン伝導を示しており、10^<-7>Sm^<-1>の定常値は電子による電気伝導を示唆している。
|