研究概要 |
1.前年度は合成フッ化四ケイ素雲母をホストとして用い、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジンとのホスト-ゲスト比の異なる様々な層間化合物を合成し、その電子物性を明らかにした。今年度はフッ化四ケイ素雲母よりも陽イオン交換容量の小さいサポナイトをホストに用いた系を合成し、その物性を調べた。この結果、フッ化四ケイ素雲母では1:1化合物にのみ見られた水の可逆的吸着がサポナイト系では1:3化合物でも観測され、細孔構造をとっていることを明らかにした。 2.ゲストとしてN,N,N',N'-テトラメチルベンジジン、N,N,N',N'-テトラメチルフェニレンジアミン、および2,3,5,6-テトラメチルフェニレンジアミンを取り上げ、それぞれフッ化四ケイ素雲母およびサポナイトとの層間化合物を合成し、いずれの化合物も粘土層間でラジカル生成を起こすことを明らかにした。また、前述の3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン-サポナイトおよび前年度に合成したフッ化四ケイ素雲母化合物を合わせた粉末X線回折の結果から、N位にメチル基が置換したゲスト分子は常に粘土層に対して分子平面が平行になるような配列をとるが、N位に置換基を持たないものでは、あるホスト-ゲスト比の範囲内で粘土層に対して立ち上がった分子配列を取ることを明らかにした。 4.フッ化四ケイ素雲母をホストとした場合には、生成する層間化合物は粉末状の沈殿物であり、配向試料を得ることは困難であったが、サポナイトを用いた場合には、ゲル状生成物が得られ、このゲルをガラス板などの平板上に展開、乾燥することで容易にフイルム状の試料を作製することができた。このことから、サポナイトをホストとして用いることにより伝導性薄膜の作製が有望であることが明らかとなった。
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