本研究は、強磁場中での遠赤外〜近赤外反射スペクトルを測定するというものである。当該研究期間において、Voigt配置(磁場方向⊥光進行方向)の反射スペクトルが測定できるようになった。Faraday配置(磁場方向//光進行方向)の実験に関しては、窓板でのFaraday回転の問題がまだ解決されていないために、まだ実験を行える状況にないが、この点は、今後改良する予定である。 テスト測定は、θ-(BEDT-TTF)_2CsZn(SCN)_4(試料サイズ0.4mm×2mm)に関して行った。この試料は約20Kで構造相転移を起こす。この試料のゼロ磁場下の反射スペクトル(700cm^<-1>〜7000cm^<-1>)は、相転移直上の25Kおよび直下の8Kで、ほとんど差が見られない。一方、9.6Tの磁場下では、25Kで反射率の有為な上昇がみられるのに対して、8Kではほとんど有為の差がないという違いが見られた。この反射率の上昇は、おそらく反強磁性揺らぎが、磁場印加により、減ったことに起因すると考えられる。 本研究に関連して、分子性導体結晶に関するいくつかの研究を行った。中でも、i)θ-(BEDT-TTF)_2CsZn(SCN)_4塩の反射スペクトルと電荷分離の相関を調べる研究、ii)フタロシアニン塩における巨大負磁気抵抗の発見、iii)一次元DCNQI塩(Me_2DCNQI)_2Li_<1-x>Cu_xを用いた、mid-infrared bandの研究は、特筆すべき成果である。
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