混合微粒子分散系の安定性を表面間力的に調べ、分散溶液構造との相関で安定分散の諸因子を明らかにした。混合分散系ではそれぞれの粒子表面特性が異なるため、表面改質して同質表面を作る必要がある。そこでまず、高分子電解質を用いてシリカ粒子表面を改質しその表面特性を界面電気化学的、表面間力的に調べた。その結果、高分子電解質は低い表面被覆率でも大きな静電反発力を与え、粒子を安定分散させ得ることがわかった。混合分散系でしばしば用いられるイオン性界面活性剤の安定分散に及ぼす効果も調べた。水中ではエントロピー的排除効果で、界面活性剤イオンは、その疎水性化度が大きいほど、反対符号の電荷を持つ表面に特異吸着する。これに対し、非水溶液エタノール中では界面活性剤イオンのエントロピー的排除効果が水中より弱くなるため、特異吸着せず、無関係塩と同じイオン挙動を示すことがわかった。ポリカチオンの高分子電解質と陰イオン性界面活性剤が共存すると、その混合比とともに異なった構造体から成る複合会合体が生成する。これら会合体が水溶液中に低濃度で共存した混合分散系では、無機固体表面間の相互作用に大きな変化はない。そこで、混合分散系安定性のモデルとして、水中に界面活性剤ミセル粒子が共存した系で、固体表面間相互作用に及ぼすミセル粒子濃度の効果を調べた。ミセル粒子濃度が低い場合、固体表面間力は静電反撥力のみで分散安定性が保たれる。ミセル粒子濃度が増すと、静電的表面間力は弱まるが、ミセル粒子が介在することによると考えられる立体反発力が新たに観測され、その遠達性はミセル濃度の増加と伴に静電反撥力よりも大きくなることがわかった。これらの研究成果から、混合分散系を定分散するには、1)粒子表面の電位を同符号でかつ大きくすること、2)その方法として高分子質を用いた表面改質法が有用であること、3)活性剤ミセルは立体障害的に安定分散を支え得ること、4)極性非水溶媒では界面活性剤イオンが支持電解質として使えること、5)無極性溶媒では立体障害力以外に安定分散を与えられないことが結論できた。
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