平成11年度は、これまで解決されていなかったミセル溶液の電子移動で生ずるキンノンラジカルに重点をおき研究を進めた。ミセル捕捉環境場で電子捕捉するキノンのミセル内での位置を明らかにするため、脂溶性のニトロキシドラジカルでラジカルプローブの位置が鎖上で異なる数種類を用いた。この脂溶性ニトロキシドラジカルのミセル内での分子運動の指標の一つである回転相関時間(τ_R)を求め、ミセル内の位置とτ_Rの関係を詳しく検討した。また、スピンプローブ/ミセル溶液系に1-プロパノールを加え、ミセルの形状を変化させτ_Rの違いを観測し、より正確なプローブのミセル内での位置に関する知見を得た。このスピンプローブ/ミセルとスピンプローブ/ミセル/1-プロパノール溶液系のデータを基に、キノン/ミセルとキノン/ミセル/1-プロパノール溶液系の実験を行い、ミセル捕捉環境場で電子捕捉するキノンのミセル内での位置について考察した結果、電子を捕捉するキノンはミセルの電荷の影響を受けやすい領域に存在すると考えられた。 次に、キノンが電子を捕捉すること、即ち、抗酸化的働きをすることが明確になったので、最近新たに注目されているフェノールであるセサモールについて実験を進めることができた。また、キノンの電子捕捉に関する知見を一層展開する上で、ベシクル系でのキノンやフェノールの試験的実験にも着手することができた。これらの研究成果は、日本における代表的ないくつかの学会で発表したと共に、第90回アメリカ油化学会で口頭発表した。さらに、国内外の学術誌にも発表した。
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