最終年度は、これまでの実験結果をふまえターゲットとしてきた長鎖を持つキノンが、ミセル反応環境場で水和電子を捕捉する定量解析を行った。ミセル溶液にキノンの仕込み濃度を変え、クエンチされる水和電子の寿命を求めた。その結果、このキノンは擬一次反応で現される2.1x10^6sec^<-1>の速度でクエンチすることが分かった。従って、このようなキノンは不均一溶液で水和電子を捕捉することから抗酸化的機能を示すことが分かった。 さらに、この抗酸化機能を進展させる上で、新たな抗酸化性フェノールと新たな反応の媒体に関する二つの観点から実験を行った。一つは、最近注目されているフェノールであるセサモールの抗酸化過程で生ずる中間体ラジカルの反応性(或いは安定性)について検討した。その結果、セサモールの中間体は水溶液中で比較的安定(〜10μ秒)であると共に、セサモールから解離した水素ラジカルのセサモールへの付加をする特異な反応を見出すことができた。第二は、反応場を変えることによる反応の違いを知るために、ミセルからベシクルへの検討を行った。この基礎実験として、ベシクルを形成する硬化ひまし油(HCO-10)でスピンプローブを用い、水相とベシクル相における回転相関時間と電子スピン緩和時間に関して基礎的知見を得た。 これらの研究実績は、国内におけるいくつかの代表的な学会で発表したと共に、デンバーで開かれた第23回国際EPR/ESRシンポジュウム、JOCS(日本油化学会)・AOCS(アメリカ油化学会)World Congress 2000、国際フリーラジカル学会などで発表した。さらに、国内外の学術誌にも発表した。
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