研究概要 |
水素結合による有機分子の自己組織化を利用して,有機単分子膜を作成した。 基板との密着性の良い平面分子に,超分子集合構造を誘導するための水素結合部位を複数導入した分子を設計し,合成した。すなわち,直鎖型の超分子構造を作るために,頭尾に二つのアミド基を持つ平面分子(A),4,4'-(1,4-phenylen-ethynylen)di(benzamide)を考案した。また3方向性の超分子ネットワーク構造を可能とする分子として,三つのカルボキシン基を持つ分子(B),1,3,5-tri(4-carboxy phenykethynyl)-2,4,6-trimethylbenzeneを考案した。いずれの分子もアセチレン基でつながったπ電子系の平面分子であり,bis(triphenylphosphine)palladium(II)dichloride-ヨウ化第一銅触媒-トリエチルアミンによるカップリング反応で合成した。 分子Aの単分子膜は,グラファイト基板上に室温で真空蒸着することで得た。走査型トンネル顕微鏡により試料表面を観察すると,分子の大きさに相当する縞模様が観察できた。原子レベルの分解能が得られなかったので詳細な構造は特定できないが,予想通りに分子の長軸方向に水素結合による連鎖ができたことが分かった。真空蒸着条件下においても,水素結合の自己組織可能による超分子作成が利用できることが示された。 分子Bは,合成(メシチレンより出発し,2回のパラジウム触媒カップリング反応を利用),構造決定が終了し,現在,溶液-グラファイト界面での単分子層の観察を試みている。
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