研究概要 |
本年度では、研究目的を達成するために次の研究を行った。 1. ヘテロ環がシスで縮環したTTFドナーの合成と新規分子性金属の開発 スズでマスクされたジチオラートと1,2-ジハロヘテロ環をBF_3・OEt_2存在下反応させる過程を経て、ジオキサン環あるいはジチアン環がシスで縮環した種々のTTFドナーを合成できる方法を開発した。これらの新規TTFドナーの内、ジオキサン環が縮環したDOET,DOESから、それぞれ2種類の分子性金属が得られることを見出した。さらに、(DOET)_2BF_4塩と(DOES)_2(AuI_2)_<0.75>塩の構造解析に成功し、それぞれβタイプの金属的錯体であることを明らかにした。 2. 五員環O,O-アセタールを有するドナーの合成と新規分子性金属の開発 上記の研究途上で、Me_3,Alによって促進される転位反応を見出し、五員環O,O-アセタールを有するTTF,DHTTF,DSDTFドナーの合成に成功した。これらのドナーの内、TTFドナーであるDO-METは、非平面構造であるにも係わらず、金属的なTCNQ錯体を形成することを明らかにした。 3. 五員環O,O-,S,S-,O,S-アセタールを有するTTFドナーの合成と新規分子性金属の開発 2で得られた結果をさらに発展させるために、BF_3・OEt_2を用いた転位反応を開発し、五員環O,O-,S,S-,O,S-アセタールを有するTTFドナーの合成に成功した。さらに、S,S-アセタールを有するTTFドナーから3種類の金属的ラジカルカチオン塩が得られることを見出した。 今後の研究課題は、新たに得られた分子性金属の構造を明らかにし、構造と物性との関係について解釈を施すことである。
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