本研究では以下に述べる成果があった。 1.シリコン表面酸化過程における二酸化炭素の反応:二酸化炭素は気層では安定な分子として知られるが、これを低温でシリコン清浄表面に吸着させ、酸素分子あるいは亜酸化窒素の解離によるシリコン表面の酸化を行うと、酸化反応にともなって二酸化炭素のカーボネートへの変換が起こることを見いだした。シリコン酸化過程は工業的有用性から多くの研究が行われているが、酸化過程の吸着酸素の反応性についてはほとんど知られておらず、この知見は重要である。 2.シリコン表面吸着希ガス原子の光刺激脱離:光誘起表面反応の最も簡単なモデル系として、希ガス原子の光刺激脱離過程は重要である。紫外〜近赤外光照射によりキセノン・クリプトンの脱離が起こることを見いだし、光励起電荷の表面準位での再結合による表面フォノン励起が関与することを明らかにした。また、希ガスの高被覆率条件では、希ガス間の衝突による脱離成分があられることを明らかにした。加えて、酸素・水素による表面修飾することにより、脱離機構が表面・吸着種間の電荷移動を介した機構に切り替わることを見いだした。 3.銀表面吸着酸素の光反応:銀清浄表面に酸素吸着した糸で、近紫外光照射による酸素原子の消失過程について調べ、表面近傍の炭素原子の存在が反応に必要であることを見いだした。また、反応断面積の励起波長依存性から、この反応が銀基板の光吸収により生成した未緩和電子により起きていることを明らかにした。 4.超高速時間分解振動分光法のための光源開発 化合物半導体InAs表面にフェムト秒レーザー光を照射し、発生するTHz電磁波をプローブに用いる目的で、超高真空中でInAs表面を清浄化し、清浄化および温度によるTHz電磁波発生挙動の変化を観測した。その結果、清浄化によって大気中の2倍程度、また50Kの低温条件では、室温の4倍の増強が起こることを見いだした。
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