研究概要 |
1,イオン対固相抽出におけるπ-カチオン相互作用の有効性を水相からのアミノベンゼンの捕集挙動によって調べた。固相として極性の異なる三種類の修飾シリカゲル(オクタデシル基結合型、シアノプ口ピル基結合型及びフェニル基結合型)について検討した。酸性溶液でプロトン付加によって陽イオンとなったアミノベンゼンは陰イオン界面活性剤の共存下でイオン対として固相に捕集された。このイオン対の捕集率は三つの固相の中でフェニル基結合型シリカゲルに対して最も大きかった。この原因の一つとしてイオン対の陽イオンとファニル基とのπ-カチオン相互作用が働いたことが考えられる。中性から塩基性の溶液で無電荷のアミノベンゼンは無極性のオクタデシル基結合型シリカゲルに対する吸着が最も大きかった。 2,イオン対固相抽出を環境水中の陽イオン界面活性剤(CS^+)の吸光光度定量に応用した。CS^+はリンスや柔軟仕上げ剤の有効成分であるがその毒性は強い。下水道の完備していない地域ではCS^+は家庭排水から環境水にかなり放出されていると考えられるが、実際にはCS^+は検出されない。これは、家庭から同時に放出される洗剤やシャンプーの成分である陰イオン界面活性剤と安定なイオン対を形成しているためと推測される。そこで,このイオン対として存在するCS^+の定量法の開発を目指した。フェニル基結合型シリカゲルを用いてイオン対型のCS^+を定量的に捕集することができた。また,PTFE膜による捕集も良好であることがわかった。捕集したイオン対を少量のメタノールで溶出後,陰イオン色素を加え、CS^+を陰イオン色素とのイオン対に変換し、溶媒可溶性膜に捕集して,膜ごと溶解する吸光光度法を開発することができた。現在,種々の環境試料への応用を検討している。
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