双型水晶発振子は、同一フローセル内で2枚の片面電極分離型水晶発振子を組み合わせて、それぞれの水晶振動子が発振するようにし、一方の水晶振動子に定量しようとする物質のみが付着するようして、両者の振動数差を求めることにより、液性等の変化による振動数変化を相殺し、定量物質の付着のみによる振動数変化量を求めるものである。 2つの水晶振動子の振動数挙動を不一致にする因子の中で、最も重要なことはそれぞれの水晶振動子と白金板電極との距離を等しくすることと、印加電圧の調節である。このような因子に注意すれば、液性から生じる振動数変化を相殺することができる。また、水晶振動子に機能性膜としてのキトサンを塗布すると液性等に対する振動数特性が変化する。しかし、他方の水晶振動子に酢酸セルロースを塗布すれば、液性に対する振動数特性がキトサン膜のものと一致し、キトサン膜への金属イオンの付着による振動数変化のみを求めることができる。しかも実験条件を選択することにより、銅(II)が選択的に付着し、銅(II)の濃度と付着による振動数変化量との間に直線関係を得ることができた。 一般に、水晶振動子上に物質が付着すると振動数が減少するが、溶液中で、キトサンを塗布した水晶振動子に金属イオンが付着することにより振動数が増加した。この原因はキトサン膜は弱酸性及び中性溶液中では正電荷を持ち、金属のヒドロキソ錯イオンの付着により、膜表面の正電荷が減少することにより振動数が増加したものと考察しているが、詳細については今後の検討課題である。
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