研究概要 |
水溶液系において,モリブデン酸イオンと6配位酸素酸イオンの錯生成反応を系統的に検討し,高濃度領域でしか生成しないというこれまでの定説に反し,最適pH条件を選べば極低濃度領域においてアンダーソン型錯体が安定であることを見出した。その結果,モリブデン酸を反応試薬とする6配位酸素酸イオンのキャピラリー電気泳動分析が可能となった。すなわち,Cr(III)を錯生成により陰イオン種[CrMo_6O_<24>H_6]^<3->に変換しCr(VI)(Cr_2O_7^<2->)との同時定量法および過ヨウ素酸イオンをモル吸光係数の高い[IMo_6O_<24>]^<5->錯体に変換しヨウ素酸イオンとの高感度同時定量法を開発した。モリブデン酸を反応試薬とする4配位酸素酸イオンおよびモリブデン酸-リン酸混合試薬による6配位酸素酸イオンの特異的認識反応条件を確立した。同じ電荷をもつ酸素酸イオンでもわずかなサイズの違いにより錯生成反応が全く異なるため,分離分析できることが明らかとなった。さらに,反応の場を水-有機混合溶媒系に拡大し,3配位酸素酸イオンとモリブデン酸イオンとの錯生成反応を系統的にまとめた。また,水溶液系ではアンダーソン型錯体を生成するガリウム(III)イオンが,水-有機混合溶媒系ではケギン型錯体を生成することを見出し,ボルタンメトリックなガリウム(III)イオン定量に応用した。さらに,水-アセトニトリル混合溶媒系において,新規モリブド亜リン酸錯体およびβ-ケギン型モリブドリン酸錯体が安定に生成することを見出し,合成単離するとともにその溶液化学的性質を明らかにした。電気分析化学的触媒反応の基礎検討として,ポリオキソメタレート錯体のボルタンメトリック酸化還元挙動におよぼす陽イオンおよび溶媒の効果について検討した。水素イオンおよびアルカリ金属イオンを共存させると1電子過程から多電子過程へと変換することを見出すとともに,溶媒の塩基性および比誘電率との関連性を系統的にまとめた。
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