研究概要 |
微生物や動植物が産生するタンパク質やホルモン溶液あるいは血清などに含まれ、ショック症状を引き起こす有毒性リポ多糖であるエンドトキシンを簡易迅速かつ高効率に除去する方法が望まれている。本研究では、水溶液中の温度感応性高分子ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(以下PNIPAAm)が臨界温度(約32℃)以上で析出・凝集し、その際に水中の微量疎水性有機化合物を凝集体(固相)中に濃縮・分離する現象に着目し、PNIPAAmを捕集媒体として、血清や菌体培養液から両親媒性毒物であるエンドトキシン類を除去する簡易迅速な分離法を構築するための基礎的検討を行なった。 抽出媒体として、重合数1000(分子量125,000)のPNIPAAmを用いた。PNIPAAm媒体は、その取り込みが疎水性支配でありながら親水性要因も影響する特異な性能を有しており、両親媒性物質であるエンドトキシンには特に適した媒体である事が明らかになった。リポ多糖であるエンドトキシンは、糖鎖部分が多様なので、アルキルフェノールエトキシレート(以下EPEO)をモデル化合物として分配の要因を明らかにした。EPEOのPNIPAAm(固相)-水相間の分配定数K_Dは、高い抽出効率を示し、EPEOの構造に依る親水性-疎水性バランス(HLB)値と高い相関性を示した。この結果に基づいて、エンドトキシンに対する高い捕集効率を示す分離システムを構築するガイドラインを得た。実際試料では、エンドトキシンは7千倍に濃縮・捕集され、その除去率は40%であった。
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