研究概要 |
ショウジョウバエのミトコンドリアDNA(mtDNA)においては、複製や転写の開始点は非コード領域であるA+T-rich領域に含まれている。この領域は2種類のリピートエレメントから構成され、エレメント内には種間で高度に保存された配列が存在しているが、その機能に関してはまだ明らかではない。松浦らのグループでは、D.melanogaster近縁種のうち、すでにD.simulans(siII,siIII)、およびD.mauritiana(mal)について、A+T-rich領域の一部の塩基配列を決定している。本年度は、さらに3タイプのmtDNAに関して塩基配列の決定を試みるとともに、それらの配列内にある二次構造形成部位についての解析を行った。 (1) D.simulans(siI)、D.mauritiana(maII)、D.sechelliaの3タイプのmtDNAについて、複製開始点を含むと考えられるA+T-rich領域の中央部分の塩基配列の決定を試みた。それぞれのタイプについて複数のクローンを得て、現在、その配列決定を行っている。さらに、タイプIIリピートエレメントを含む領域についてのクローニングも進めている。 (2) A+T-rich領域の中央部分、およびタイプIIリピートエレメントを含む領域について、これまでに得られているD.simulans(siI,siII,siIII)、およびD.mauritiana(maI)のクローンを利用して、その配列内に二次構造が形成されるかどうかをS1ヌクレアーゼによって調べた。その結果、タイプIIリピートエレメントを含む領域については、S1ヌクレアーゼによって切断される部位は種間でよく保存された領域内にあり、二次構造検索プログラムであるMulFoldによって予測されてステムループ形成部位ともほぼ一致する傾向が認められた。このような結果は、このステムループ構造が何らかの機能をもつ可能性を示唆している。
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