本年度においては、主にテネイシンX(TNX)の機能解明に向け、まず細胞外でTNXと結合する分子の同定を酵母two-hybridの系を用いて明らかにした。マウスTNXに特異性の高い配列であるフィブロネクチン・タイプIII(FNIII)配列をbaitとして、酵母two-hybridの系を用いHcLa細胞由来cDNAライブラリーをスクリーニングしたところ、TNXのFNIII領域に結合する因子として血管内皮増殖因子(VEGF)のメンバーの一つであるVEGF-B_<186>を同定した。VEGF一B_<186>のTNX・FNIIIとの結合には、VEGF-Bの二つのアイソフォーム(VEGF-B_<186>とVEGF-B_<167>)に共通の配列であるN末端から137aaが必要であることが明らかとなった。またTNXの、VEGF-B_<186>との結合配列の決定を行ったところ、VEGF-B_<186>に結合するのはbaitに用いたFNIII配列のところのみで、TNXの他の領域たとえばヘプタッド・リピート領域、フィブリノーゲン様領域にはVEGF-Bは結合しないことが明らかとなった。 さらにTNXの遺伝子発現の制御機構を明らかにする目的で、TNXのプロモーター領域の解析を行った。マウスTNXのプロモーター領域をレポーター遺伝子に結合させ、293T細胞に遺伝子導入をおこない、レポーター遺伝子の活性を目安にし、TNXのプロモーター活性を測定した。その結果-1333から-1032の領域にTNXの転写を抑制する活性があり、また-1032から-154の領域はTNXの転写に必須の因子が結合する可能性のある領域であることが明らかとなった。今後、TNX遺伝子の遺伝子発現を調節している因子の同定を試みる予定である。
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