生息地の空間構造が有害遺伝子の蓄積に及ぼす影響を、サカマキガイ(Physa acuta)を使った研究とシミュレーションモデルを使った予測を用いて調べた。2つの異なる生息地から貝を採集した;(1)水田で水のあるときは比較的水位の安定した大きな集団(Large stable population)、(2)遊水池の水たまりで通常は小さな水たまりであるが、雨によって大きな池となってつながる(Alternate mixing population).Altenate mixing populationでは、小さな水たまりの小集団内で高密度で近親交配をしている可能性が高く、そのため高密度での近親交配で適応度の低下した個体は淘汰されるため、高密度下での近交弱勢の効果は小さいと予測できる。それを確かめるため、2つの集団から採集した個体の近交弱勢の程度を低密度と高密度の状態で調べた。産卵数に関してはAltermate mixing populationの個体は高密度で近交弱勢はほとんど見られなかった。しかし、生存率に関しては、Altenate mixing populationの個体の方が低密度高密度ともに近交弱勢の効果が大きかった。また、生息地の空間構造が弱有害遺伝子の蓄積に与える影響についてシミュレーションモデルで確かめた。その結果、湯突然変異荷重には、全体の個体数だけでなく、neighborhood sizeが独立に影響していることが明らかになった。また、生息地の形が有意に突然変異荷重に影響し、特に細長い地形は有害遺伝子の蓄積の効果が高く、絶滅率を高めることが明らかになった。
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