1 昨年に引き続いて東北地区及び静岡県柿田川湧水までの関東地区各地でイソコツブムシ類の採集を行い、分布を日本海側及び太平洋側で比較したところ、日本海側では淡水域にも進出しているチョウセンコツブムシ種群は太平洋側ではキスイコツブムシに置き換わっている例が多く見られた。これは潮汐の大きさの差によるものと推定され、日本海側と太平洋側での沿岸沿いの河川・湖沼の動物相の成立要因に示唆を与える結果である 2 チョウセンコツブムシの繁殖期に、各地で採集した成熟個体の体サイズを比較したところ、明らかな性的二型を示し、交尾前ガードにサイズ同類交配の傾向が汽水産・淡水産においても明らかとなった。しかし、成熟サイズの大きさには汽水・淡水産で一定の傾向は認められなかった。 3 淡水産チョウセンコツブムシを用いて、交尾前ガードにおける同類交配の成立要因を明らかにする実験を行い、雄が選択的に大型の雌をガードすること、ガードの途中においても雌を放棄し、より大型の雌をガードすること、大型の雄が小型のガードと入れ替わることなどが明らかとなった。 4 淡水産と汽水産のチョウセンコツブムシでは、確定的ではないが、汽水で卵サイズは小型化し、卵数が多くなる傾向が認められた。 5 淡水産・汽水産チョウセンコツブムシの遺伝的変異を明らかにするための試料採集を昨年に引き続いて東北各地で行った。アイソザイム分析を行い、活性のある酵素の探索を行いつつある。
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