99年の夏、調査地である宮崎県の幸島ではほぼ毎日雨が降り、山での採食行動の調査はできなかった。砂浜に出でくる主群のメスのグルーミング関係などの社会交渉を調べ、思春期メスがオトナメス達の間に地位を確立しようとする行動の記録を行った。年齢および体重から見た性成熟と関連させながら、これらの行動の発現順序を明らかにしようとした。秋の調査では、小さな分裂群とその周りに出てくる思春期オスの行動域を明らかにし、その採食行動も調べた。この小さな群れは、島の北端で主群を避けながら小さなホーム・レーンジを持っていた。秋の主要食物である果実の結実は、2-3週間で次々と樹種が変わったが、小群の狭い行動域の中では、実際に結実する樹木の本数は多くなかった。小群の個体は、それぞれの樹種の結実期には限られた数の採食樹を繰り返し利用した。個体がかなり、バラバラに採食樹を訪問した。他の個体がいると、それが空くまでまったり、逆に一緒に上がったりした。採食樹の近くにオトナオスがいないときには、少し大きい若者オスはメスと競合して採食樹を利用し、オトナのオスを含むメス達が来ると、行動域の周辺の採食樹に移動した。また、彼らは、行動域の周辺の採食樹に、他の個体よりかなり早く移動し利用した。少し小さいワカモノ(あるいはコドモ)オスは、メス達と一緒に行動し、メス達に遠慮し、隙を見ながら採食樹を利用した。秋も終わりに近づき、交尾期が近づくと、ヒトリザルのオス達が近づき、ワカモノ・オスも含めてオス達はメスを攻撃するようになった。ワカモノ・オスを含め、オス達は限られた本数の採食樹の周りに少し離れて身を隠し、メスが採食に近づくと、攻撃した。メスは成熟オスと同じ採食樹にのぼったときには、落ち着いて採食した。
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