長野県浅間山中腹の標高1500m付近にて、巣箱を252個設置し、中で休息中のヤマネとヒメネズミを捕獲、識別マーキングを施した。利用した巣箱の位置を結んで、両種の個体別行動圏を得た。識別した成獣頭数はヤマネがメス13頭、オス20頭、ヒメネズミがメス45頭、オス30頭であった。行動圏の平均は、ヤマネがメス0.50ha、オス1.52ha、ヒメネズミがメス0.10ha、オス0.14haであった。 ヤマネの行動圏は異性間及びオス同士で著しく重複していたが、メス同士の重複はほとんどなかった。オスは1〜3頭のメスと行動圏を重複させていた。 ヒメネズミでは、雌雄共に同性同士の重複はほとんどなかった。ヒメネズミのオスも1〜3頭のメスと行動圏を重複させていた。巣箱の利用パターンは両種間で著しく異なっていた。ヤマネは4月から10月まで5%以下の低い割合で巣箱に滞在していたが、ヒメネズミは春の0.05%から秋の14%まで急激に変化した。ヤマネは繁殖巣以外にも日中の泊まり場として巣箱を利用し、転々と多くの巣箱を渡り歩いていた(最大9個)。一方、ヒメネズミは主に繁殖巣として巣箱を利用し、一個体が利用した巣箱も最大で3個であった。同一の巣箱を両種ともに利用しており、ヒメネズミが巣材を入れた巣箱にヤマネが潜んでいたり、ヒメネズミとヤマネが一つの巣箱に同時的に同居していることが観察された。利用した巣箱の分布から両種間に巣を巡る排他的な関係は認められなかった。
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