研究概要 |
粘菌アメーバは土壌や朽木中の細菌をエンドサイトーシスによって捕食し増殖する.本研究の目的は,その際放出される溶菌性物質を探索し,微小環境中で粘菌アメーバが行う細菌攻撃の機構を明らかにすることにある.本年度は次の項目1〜4を調査した[一部は日本微生物生態学会第15回大会(1999)で発表]. 1.二重の溶菌斑形成とそれに関わる物質 細菌懸濁寒天上の溶菌斑はしばしば中心部がクリアーで周辺部がやや不透明な二重構造を示し,2つの物質の関与を示唆した.そのうちの1つはゲル濾過から高分子であることがわかった. 2.生成,放出の最適条件 本年度の研究から好気条件下で粘菌アメーバと細菌がはじめて接触したとき,爆発的な溶菌活性が現れることがあらたに発見された(Initial Burstと仮称).この発見を起点に大きな展開が予想される. 3.溶菌性物質の性質 Initial Burstでは溶菌斑はクリアーで必ず一重となった.このことから,粘菌アメーバから放出される物質にはA,Bの2種があって,Aのみではやや不透明な溶菌斑となると解釈された.Aが1項で述べた高分子であろう.Bは酸素の存在下,細菌との接触で放出される物質であるが,詳細は不明である. 4.エンドサイトーシス現象と溶菌性物質放出の関係 酸素の存在下,粘菌アメーバが細菌と接触するとシアン耐性呼吸が上昇し,溶菌性物質が放出され,一連のエンドサイトーシス現象が活発化することが観察された.
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