本年度は植物でまだGPIアンカータンパク質に関して報告のないコケ植物におけるGPIアンカータンパク質の存在を検討した。 材料としてゼニゴケ(Marchantia polymorpha)のメス株配偶体葉肉細胞より得た培養細胞を用いた。先ずMurashige-Skoogの液体培地で25℃、長日条件で培養した細胞を使い、GPIアンカーの前駆体である〔^3H〕エタノールアミン、〔^3H〕ミリスチン酸で標識し、回収した細胞と、培養液上清のタンパク質をSDS-PAGEにより分離し、放射標識の分布を調べた。細胞に由来するタンパク質は、多数のラジオピークが観察されたが、GPI前駆体物質の取込みが特に顕著なものはなかった。一方、分泌タンパク質が含まれる培養液上清タンパク質では47kDaのタンパク質に双方の放射標識が取り込まれることから、分泌性の47kDaタンパク質がGPIアンカータンパク質であることが強く示唆された。 分泌性の47kDaタンパク質の性状を更に明らかにするために、このタンパク質の精製を試みた。全分泌タンパク質を疎水性カラムクロマトグラフィ、イオン変換カラムクロマトグラフィに供し、47kDaタンパク質を電気泳動的にほぼ単一に精製した。当該タンパク質のN-末端アミノ酸配列を調べ、そのホモロジー検索を行ったところ、このタンパク質は復活草(Craterostigma plantagineum)から単離されている乾燥関連タンパク質のアミノ酸配列と高い相同性を示した。
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