ニンジンの細胞同士が堅く結合しているカルスEmbryogeniccallus(EC)は不定胚形成能力を有するが、長期間継代培養された細胞株Non-embryogeniccallus(NC)は、ソマクローナル変異の結果、非常に細胞接着がルーズになるとともに、形態形成能力を失っている。この細胞株では、ペクチン多糖の中性糖側鎖の構造および量に大きな差のあることが見出された。しかし、NCはソマクローナル変異で生じたものなので、その原因遺伝子の探索が事実上不可能である。そこで本研究では、Nicotiana属中で最小のゲノムを持つNplumbaginifoliaの半数体植物を材料として用い、ニンジンのNCと同様の性質を示すミュータントの作出と解析を行うことで、ペクチン多糖の構造と機能の理解と細胞接着関連遺伝子の単離をめざした。 その結果、ハイグロマイシン耐性マーカーを有するT-DNAを導入したところ、6.7%の葉切片に不定芽分化をせず細胞接着の弱いカルスが出現した。そこで、変異カルス株nolacp-H14について、組織化学的観察を行ったところ、nolacp-H14では、細胞間が分離しており、ルテニウムレッドによるペクチンの染色性が非常に弱いことが観察された。また、細胞壁多糖を分画し、その構成糖分析とペクチンの構造解析を行ったところ、nolacp-H14では、ペクチン側鎖のアラビナンが欠失しているおり、本来細胞壁と結合するべきペクチンが培地に漏出していることが判明した。
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