高等植物の遺伝子発現や複製について詳細を明らかにするためには、クロマチンの核内での存在形態、DNAと核マトリックスの相互作用など明らかにすることが欠かせない。そこでクロマチンDNAと核マトリックス構成蛋白質の結合部位について蛋白質側、DNA側の双方から解析を行い、DNA結合蛋白質、核マトリックス結合DNA領域についてその分子種あるいは配列を明らかにすることを目的として研究を行っている。 前年度の研究から、イネ細胞核の核マトリックス結合領域(MAR)を含む500〜2000塩基対のDNA断片の多くにはCAAAAAとTTTTTGという6塩基対からなる領域が存在することが明らかになった。このCAAAAAとTTTTTGという6塩基対からなる領域はすでにデータベース上に登録されている植物の核マトリックス結合領域の塩基配列の多くのものにも存在していた。そこで、本年度は、この6塩基対を合成してイネ核マトリックスを構成する蛋白質との結合能の検討を試みた。現在、メンブレン上にブロットされた核マトリックス構成蛋白質に対して、この6塩基対を含むDNA断片を標識して結合させその特異性を解析しているが、安定した実験結果を得るためには緩衝液の組成などのさらなる改善が必要である。 一方でコンピュータによるシミュレーションによって塩基配列によるDNA分子自身の立体的な折れ曲がり構造の解析を開始した。これまでに得られているMARのDNA自身の立体構造のデータベース化はほぼ完了した。現在、上述の6塩基対など特定の塩基配列に特徴的な立体構造の検出を試みている。
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