前年度に引き続き、プリンアルカロイドレベルの調節機構について検討した。多くのプリンアルカロイド生産植物では、カフェインの分解活性は極めて低く、カフェイン生合成活性が細胞内プリンアルカロイド量を制御していることが明らかにされた。カフェイン分解活性が高い植物は、Coffea eugenioidesであり、この種ではカフェインがテオフィリンを経由してキサンチンになり、さらにアラントイン、アラントイン酸を経て、二酸化炭素とアンモニアに分解された。チャ葉におけるカフェインの生合成活性の変動が、葉のエイジと光によりどのような影響を受けるか検討した結果、生合成能は、極めて若い葉で最大であるが、葉の成熟に伴い減少すること、光により葉1枚あたりのカフェイン量は増加するが、これは光による葉の成長に基づいており、光は直接にはカフェイン合成には必要がないことが示された。前年度に精製されたカフェイン合成酵素(CSと名づけた)のN末のアミノ酸配列を元にして、CSをコードしている遺伝子をチャ葉からクローニングした。このcDNAをもとに、CSのmRNAの発現を調べた結果、若い葉での発現が高く、カフェイン合成はCSの転写レベルでの調節が主要なCoarse controlであることが示唆された。Fine controlに関しては、S-アデノシルメチオニン(SAM)やプリンヌクレオチドの供給度による調節が考えられた。ヌクレオチドの生合成活性は若い葉で極めて高く、CSの発現だけでなく、カフェインの基質の供給系も重要なカフェイン生合成の要因となっていることが示された。Coffea eugenioidesでみられるカフェイン分解に関して、初発反応を触媒する酵素活性の検出が試みられたが、まだ成功しておらず、分解系の制御機構については今後の研究が必要である。
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