研究課題/領域番号 |
10640630
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
長谷 俊治 大阪大学, たんぱく質研究所, 教授 (00127276)
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研究分担者 |
有賀 洋子 大阪大学, たんぱく質研究所, 助手 (60255429)
藤田 祐一 大阪大学, たんぱく質研究所, 助手 (80222264)
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キーワード | 炭酸同化 / 窒素同化 / フェレドキシン / フェレドキシンNADP^+還元酵素 / 電子伝達複合体 |
研究概要 |
光合成生物における炭素と窒素の同化反応は、共に還元力やATPを直接あるいは間接に用いる代謝系であり、統御のとれた代謝のためには、両反応が互いに密接に関わりながらバランスが保たれることが重要である。C4植物であるトウモロコシでは葉肉細胞(MC)と維管束鞘細胞(BSC)では炭素と窒素の同化が分業しており、窒素同化の割合はMCで多い。この2種の光合成細胞で電子キャリアーでるフェレドキシン(Fd)が分子種の異なるイソ蛋白質(FdIとFdII)として分布し、Fd:NADP^+還元酵素(FNR)との電子授受の特性が異なる。この2種のFd遺伝子をシアノバクテリアPlectonema boryanumに形質転換し、細胞内での炭素と窒素への電子配分や光化学系Iからの電子の流れを解析した。その結果、MCのFdIは非循環型の電子伝達で効率よく機能し、NADPHの生産や窒素同化系酵素群への還元力配分能力に優れること、一方BSCのFdIIは循環型の電子伝達に寄与し、窒素同化の駆動には劣ることが判明した。そして、Fdを介した電子配分が窒素同化を制御するステップの一つであることを証明した。この代謝間の還元力をめぐるクロストークは、Fdとそれぞれの代謝系で機能する還元酵素との蛋白質間の電子授受が制御要因であると考えられる。これについての構造生物学的情報を得るため、FdとFNRの電子伝達複合体の結晶構造を決定し、複合体を安定化する蛋白質間の相互作用部位および電子授受を行う補欠分子族の立体的位置関係を明らかにした。また、非光合成組織でも窒素代謝が活発に行われており、そこへの還元力供給系は光合成組織とは異なるFdやFNRの分子種が機能していることも明らかにした。今後、窒素や硫酸同化系酵素とはどのような相互作用形式をとっているのか解析を進め、代謝間のクロストークの構造基盤の詳細を明らかにする予定でいる。
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