2年目の本年度は、まず、昨年度に緑色イオウ細菌でその存在が示唆されたチトクロムc_1の探索を行った。調製された膜標品の可溶化、イオン交換クロマトグラフィー後、SDS-PAGEおよびヘム染色により、十数本のタンパクからなる粗精製標品が得られた。N末端アミノ酸配列の決定を試みたところ、残念ながらヘムcタンパクではなく、ヴァルバキアの外膜タンパクとsimilarityのあるものが得られた。恐らくN末がブロックされていると考えられ、今後の戦略を検討中である。 次に、緑色イオウ細菌と同じように系I型反応中心をもつ、ヘリオバクテリアの電子伝達経路を調べることにした。ヘリオバクテリアはグラム陽性の光合成細菌であり、コアタンパクはホモダイマー構造をとることが分かっている。しかし還元側のF_A/F_Bタンパクや、反応中心P798の直接の電子供与体と考えられているチトクロムc(cyt c)の実体については不明である。そこでH.gestiiの細胞と膜標品を用い、反応中心の電子供与体側の反応解析を行った。膜標品では、フラッシュ照射により酸化されたP798^+の再還元は、2相性(t_<1/2>=3msと7ms)を示した。早い成分はcyt cの酸化速度と一致し、cyt cからP798への電子伝達と判断した。遅い成分は、還元側からの電子の戻りと思われる。しかしcyt c->P798の反応は、細胞中(in vivo)での反応速度(t_<1/2>=約100μs)と比較すると極端に遅かった。この違いの原因について、二価カチオンMg^<2+>や温度の影響を調べた。また、bc複合体の阻害剤であるstigmatellimの添加により、cyt cの再還元速度は遅くなることも分かった。
|