研究概要 |
植物の光受容体フィトクロムは、複数の分子種から構成され、その細胞内信号伝達系は、分子種間の相互作用あるいはそれ以外の光受容体によって、増幅もしくは抑制を受ける。我々は、ホウキモロコシのフィトクロムPfrによるアントシアニン誘導において、Pfr信号伝達系が、異なる分子種のPfrによって作られる隠れた因子cryptic red-light signal(CRS)によって増幅されることを見出した。そこで、CRSの生成と作用に焦点をあわせ、Pfr信号伝達の解明を試み、以下の成果を得た。 1.CRS生成は、速いPfr反応によって起こる。そこで、赤色光と遠赤色光パルスをミリ秒オーダーで自動照射できるLED照射装置を開発し、CRS生成誘導時間を測定した結果、反応の半期が約1秒と判明した。これは最も速いPfr反応の一つである。 2.CRSはフィトクロムの信号伝達カスケードに関わる可能性がある。cAMPとcGMPの関与を調べるため、CRS誘導条件で、Adenyl cyclase,Guanyl cyclase及びPhosphodiesteraseの活性を測定したところ、Guanyl cyclaseの活性上昇の傾向を得た。cAMPとcGMPを抽出定量したが、明らかな結果は未だ得ていない。今後も、CRSと環状ヌクレオチド、その他のセカンドメッセンジャヤーとの関わりを追求する予定である。 3.トマトのフィトクロム突然変異体を用い、CRSを生成するフィトクロム分子種の同定を試みたが、その特定には至らなかった。しかしその過程で、phyAが種子発芽抑制を引き起こすことを、初めて明らかにした。これは本研究の副産物的成果である。 4.CRSの影響を取り除く光照射方法で、Pfr作用増幅の作用スペクトルを作成することにより、UVB光受容体が、CRS以外のPfr作用増幅因子を誘導することを明らかにした。
|