植物に強光を照射すると、光化学系IIの反応中心D1蛋白質が酸化的な損傷を受け、分解される。この分解には、光化学系IIの還元側で生じる活性酵素、酸化側で生じる内在性カチオンラジカル、それにプロテアーゼが関与している。さらに、光化学系IIの膜表存性蛋白質(OEC33、24、18)は、このD1蛋白質の分解において、調節的な役割を果たす可能性が示されている。本研究では、D1蛋白質の分解に関わるこれらラジカル分子種の具体的な機能について解析を行い、さらにOEC蛋白質については2次構造の解析を行った。その概要は以下の通りである。 1.光照射で損傷を受けたD1蛋白質は、速やかに分解されるが、その一方で光化学系II複合体中の蛋白質と架橋反応などを起こし、凝集産物(アグリゲート)を生じる。凝集(アグリゲーション)はD1蛋白質とD2蛋白質、cytb559 α-subunit、CP43の間でそれぞれ起こる。本研究では、葉緑体ストロマ中にこれらのアグリゲートを分解する活性があることを見出した。この活性は、SDS-resistantで、ストロマの蛋白質のうち、約15kDaの分子量をもつ成分にこのプロテアーゼ活性があることが分かった。 2.D1蛋白質のアグリゲート形成は、光化学系IIの膜表存性蛋白質OEC33によって調節されることを見出した。OEC33は、光化学系IIのD1蛋白質周辺の構造を維持する分子シャペロン的な役割を果たしている可能性が示唆された。 3.フーリエ変換赤外分光法により、OEC24および18の2次構造解析を行った。その結果、これらの蛋白質はαヘリックスよりβ構造の含有量が大きく、また、熱に安定な性質があることが示された。
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